CELCOR
Market Forces
Jubilee Australia Research Center
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development
JACSES
Reclaim Finance
2026年2月10日
生物多様性、気候、人権への重大なリスクを理由に、仏石油メジャーのトタルエナジーズが計画するパプアLNG事業に関して銀行業界のリスク基準機関である赤道原則(エクエーター原則)に正式な異議申立てが提出されたことを受け、新たに12の金融機関が同事業への資金提供を行わないと表明した[1][2]。
これにより、合計29の銀行および輸出信用機関が同事業を除外したことになる[3]。
今回新たに「資金提供しない」と書面で回答した12の金融機関には、ING、ラボバンク、スタンダード・バンク、ノルウェー輸出金融公社(Export Finance Norway)、KfW IPEX-Bank、スウェーデン輸出信用銀行(SEK)などが含まれる。これらの回答は赤道原則10項目のうち6項目に違反しているとの指摘を含む異議申立てを提出した団体からの照会を受けた結果である。
これに先立ち、11の赤道原則への署名銀行を含む15の金融機関が、すでに同事業への資金提供を行わないと表明していた。その中には、フランスのクレディ・アグリコル銀行も含まれ、同行は環境および人権上の懸念を理由に、2024年に同事業の主幹財務アドバイザーから撤退している。
異議申立て提出団体の1つであるReclaim Financeのキャンペーン・コーディネーター、アントワーヌ・ブイエは次のように述べている。
「ますます多くの銀行や輸出信用機関が、この事業がもたらす甚大なリスク、そして赤道原則に明確に違反している事実を認識し始めています。MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)を含む、赤道原則に署名している銀行が、パプアニューギニアの人々に壊滅的な影響を及ぼし、地域環境と地球規模の気候に深刻な被害を与えることが明らかなこの事業への関与を、いかに正当化しているのか疑問を持たざるを得ません。」
今回の12行の新たな表明により、赤道原則署名金融機関の6分の1が同事業を支援しないことが明らかになった。またさらに4行が「現在は関与していない」と回答している[4]。さらに2行は実質的な回答を行っていないものの、LNG事業への資金提供を除外する明確な方針を有している[5]。
Jubilee Australia Research Centre 環境正義ディレクターのショーナ・ホークスは次のように述べている。
「赤道原則に署名している金融機関の6社に1社以上が、パプアLNGへの融資を行わない方針を示しています。もしこのプロジェクトが進められ、私たちが懸念しているような影響が実際に生じた場合、影響を受けるコミュニティが、この事業を支える銀行に対して損害賠償を求めることができるのか、という問題が浮上します。パプアLNGをめぐっては、あまりにも多くの情報が非公開のままです。人権や気候変動への影響に関する重要な評価が、なぜ一般に公開されていないのでしょうか」
銀行が同事業への支援をためらっている事実は、事業の実現可能性そのものに疑問を投げかけている。現在、日本のMUFGが主幹財務アドバイザーとして報じられているが、最終投資決定(FID)は2025年にも再び延期されており[6]、当初は2020年に予定されていた[7]。一部のアナリストは、事業の再編成が行われる可能性も指摘している[8]。
マーケット・フォースの最高責任者(CEO)であるウィル・バン・デ・ポル氏は、次のように述べています;
「オーストラリアの大手4行すべてを含む世界の主要銀行の多くが、リスクの高まりを認識し、パプアLNGプロジェクトへの資金提供を除外しています。その結果、MUFGをはじめとする日本の銀行は、ますます孤立した立場に置かれています。パプアLNGを支援しようとする銀行の数が減少していることは、このプロジェクトが抱えるコスト超過、人権問題、生物多様性へのリスクを浮き彫りにし、さらにそれらを深刻化させています。これらのリスクは、アジア太平洋地域でのクリーンエネルギーへの重要な移行を損なう恐れがあります。」
パプアニューギニア政府とトタルエナジーズは、最終投資決定(FID)に進む前に不可欠な手続きである、地域コミュニティの代表者との対話の機会を開催しようとしています。しかし、同社は、完全な環境影響評価(EIA)、気候変動リスク評価、最新の人権影響評価など、いくつかの重要な文書を公表していません。先住民族がこれらの文書やその他の関連資料の内容を把握していない状況では、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)に求められる「十分な情報に基づく(informed)」という要件を、本プロジェクトが満たすことは不可能です。
CELCOR(センター・フォー・エンバイロメント・ロー・アンド・コミュニティ・ライツ)のエグゼクティブ・ディレクターであるピーター・ボシップ氏は、次のように述べています;
「パプアニューギニアの人々は、生計を土地や海に直接依存しています。気候、生物多様性、生態系へのリスクに対処しないままパプアLNGに資金提供することは、将来を担保に借金をするようなものです。ガスが枯渇した後も、その“負債”を支払うのは、私たちの土地、海、森林、サンゴ礁、そして地域社会です。」
また、異議申立てを提出した団体(パプアニューギニア、アジア、オーストラリア、欧州の団体を含む)は、赤道原則に署名している他の銀行に対し、本案件を支援しないよう呼びかけています。
本件に関する連絡先
Helen Burley, Reclaim Finance, [email protected] +44 7703 731923
Antony Balmain, Market Forces, Mobile/Signal +61-423-253-477, [email protected]
注記
[1] 資金提供を行わないと回答した12行:
ABNアムロ、バンコ・デ・ボゴタ、バンコ・デ・クレディト・デル・ペルー、ノルウェー輸出金融公社、ING、スペイン開発金融公庫(ICO)、KfW IPEX-Bank、ラ・バンク・ポスタル、NWB銀行、ラボバンク、スタンダード・バンク、スウェーデン輸出信用公社(SEK)
[2] 参照:
https://reclaimfinance.org/site/en/2025/12/10/equator-principles-complaint-made-against-mufg-and-potential-papua-lng-project-financiers/
および「赤道原則リミテッド宛 パプアLNG事業に関する異議申立て(2025年12月)」
[3] 29機関の内訳:
注[1]の12機関、すでに除外を表明していた11の赤道原則署名機関(ANZ、BNPパリバ、コモンウェルス銀行、クレディ・アグリコル、豪州輸出金融公社、インテーザ・サンパオロ、NAB、ナティクシス/BPCE、ソシエテ・ジェネラル、ユニクレディト、ウエストパック)、方針上除外している2機関(Bpifrance、英国輸出信用保証局)、および非署名ながら除外を表明した4機関(アジア開発銀行、バンク・オブ・サウス・パシフィック、CIC/クレディ・ミュチュエル、キナ銀行)
[4] 現在関与していないと回答した機関:
カイシャバンク、カナダ輸出開発公社、ガランティBBVA、ネッドバンク
[5] Bpifranceおよび英国輸出信用保証局は回答していないが、同事業への資金提供を除外する方針を有する。
[6] Fitch Solutions「PNGのLNG事業を悩ませる遅延」(2025年3月)
[7] https://totalenergies.com/media/news/press-releases/total-and-state-papua-new-guinea-sign-gas-agreement-papua-lng-project
[8] Energy Intelligence「Papua LNG Tests Portfolio Priorities for TotalEnergies, Exxon」(2026年1月27日)
